楠木正成ってどんな人?何を残したの?(4)
囲碁を習う人は昔の人の手を学ぶ。
これをしっかり習得してはじめて、自分らしい手筋を生み出すことが出来る。
同様に、楠木正成が学んだ軍法も、元はと言えば「四武」(しぶ)あったとされるが、これが枝分かれして、三百八十有余あるという。
「四武」は、「奇兵」・「伏兵」・「陰兵」・「鳥雲」の四つである。
「奇兵」は、有るものを無いようにし、本当の姿を敵に見破られぬようにする事。
これによって、真偽相半ばのため敵が判断したり決心する事をできなくさせる。
「伏兵」は、敵が予期せぬ所に兵を配し、また不意に敵を襲う為に、隠れ伏す兵の事。
「陰兵」は敵の不意に備える軍勢のこと。
敵の中にも、味方の中にも、近隣の山村にも、居場所を定める事なく、合図によって兵を発するもの。
「鳥雲」とは、兵を分散させておき、機に臨んで分合する。
これは日々刻々と変化し、集散に常なるものがない用兵(戦いで軍隊を動かすことを言う)のこと。
戦いというのは、敵を討つことだけを指しているわけではない。
仮に一万の兵を亡くし、敵の千人を討ち取ったとしても、勝ったとは言えぬ。
日頃より、自分自身が「備え」を怠りなく、「心の中の四武」と、「外の四武」を身につけるべく精進することが何より重要である。
そうすれば自然と、「兵の徳」というものも表れてくると言うわけじゃ。
とりわけ楠木正成は、「武人における徳」を重んじた人であったと言えよう。