お不動様のひとり言

お不動様のお言葉に乗せた、ほのぼの心嬉しいお話のブログ。

私は佛様の中でも、お不動様が大好きです。
お不動様のお名前の由来は、ゆるぎない悟りを求める心…ということです。

絵像では、燃え盛る火炎を背負い、眷属(けんぞく)の矜羯羅(こんがら)童子と、
制多迦(せいたか)童子を従えているのです。

このお不動様のお言葉に乗せて、
ほのぼのと心嬉しく豊かになるお話をしたいと思います。

日本語の不思議―4 (一字多訓)

漢字を用いた熟語には、才知に長けた言葉がある。
例えば次に挙げる二字熟語は、すべて頭に「海」という漢字が来る。
海女(海士=あま)・海豚(いるか)・海胆(海栗=うに)・海老(えび)・海草(海髪=おご=オゴノリ科の海藻の総称)。
これを順に音読すると、あま・いるか・うに・えび・おご…となり、上からあ・い・う・え・お…となっている。
「海」と言う字は、組み合わさる漢字との関係性によって「あ行」すべての読みが可能となっている。

「女」という字は、中々に興味深い。
「女」は、古くは、「おうな」「おかみ」「め」と言った訓が当てられた。
小説などで「あの女」と書いて、「あのこ」と読ませる文章を、今でも時々見かける。
「親娘(おやこ)」「巫女(みこ)」「湯女(ゆな)」など、熟字訓として表現される言葉もある。

「男」の方も様々に表現される。
「男」と記して、「やつ」「ひと」「こ」「やろう」などと仮名が振られる。
最近では「漢」を「おとこ」と読む場合もあるらしい。

「上」と「下」の字も面白い。
常用漢字では「上」を「うえ」「かみ」「あげる」「のぼる」「のぼす」「のぼせる」など、様々な読み方が認めらている。

中国語は単音節で語が成り立っている言語である。
又、単語の語頭や語尾を屈折させない。
さらには接頭辞・接尾辞や助詞を「膠着(こうちゃく)」させない言語体系を有する「独立語」である…と言う事は、先日述べた通りである。

よって「上」という文字を、「ジョウ」「ショウ」と発音すれば、自ずとそれらの音が有する意味や用法を、表すことができるのである。
中国語の場合、「膠着語」である日本語にとっては考えられぬほど、一義的(一つの意義しかないこと)な意味に収斂(しゅうれん)される…という訳だ。

常用漢字では、「上」以上に多くの読み方が認められているのが、「下」である。
「した」は「しも」に類似し、動詞化すると、「さがる」「くだる」「さげる」「くだす」「おろす」「おりる」「くださる」もある。
「上手」の対義語として「下手」という二字もある。

中国語と日本語の言語における差は、際立っている。
これは訓読みを縦横無尽に使い熟(こな)す、日本語の豊かな表現の幅であると同時に、前後の文脈から理解しつつ読み方を模索せねばならぬ…という、日本語が抱える「言語」としての「難易度の高さ」を示していると言えよう。

かるが故に、漢字を、日本語表記する文字として成立させてきた「日本語」は、世界に類を見ない「言語」として、成立し続けているのであろう。