吉野氏 ノーベル化学賞受賞!(1)
10月9日 スウェーデン王立科学アカデミーは、本日9日(令和元年10月9日)に、2019年の「ノーベル化学賞」を、旭化成名誉フェローである吉野彰氏をはじめ3氏に授与することを発表した。
吉野氏は、リチウムイオン電池を開発し、小型で高性能の充電池として、IT(情報技術)社会に貢献した功績が認められた。
日本並びに日本人にとって、誠に喜ばしい知らせである。
2000年にノーベル化学賞を受賞したのは、白川英樹筑波大学名誉教授。
吉野氏は、1981(昭和56)年に白川氏が発見した導電性プラスチックのポリアセチレンを、安全性の高さから負極の材料に用いた。
次に正極の素材探しが始まった。
正極の素材探しは、殊の外困難なものだった。
1982(昭和57)年の暮れのこと。吉野氏は研究所の大掃除を行った後に、今回共同受賞した米国テキサス大学教授の、ジョン・グットイナフ氏の論文を偶々(たまたま)見つけることができた。
ここで奇跡が起こる。
その論文には、「コバルト酸リチウムを充電池の正極に使うと高い性能を発揮するが、適切な負極がみつからない…」ということが記されていたのだ。
偶々、同時期に、正極・負極双方の素材と出会う…という、考えられない奇跡が起こったのだ。
年明けには、正極に、グッドイナフ氏が開発したコバルト酸リチウムを用い、負極には吉野氏が開発したポリアセチレンを用いて、これを組合わせた電池を試作したところ、充放電に成功したという訳である。
ただ負極を担うポリアセチレンは、劣化が進みやすく、小型化も期待出来ない。
そこで吉野氏は、さらに良い負極素材を探し続けていた。
そうこうするうちに、分子構造がよく似た炭素材料に行き着いた。
ここで再び奇跡が起こる。
100種類以上の材料を試した後に、当時、旭化成が研究中であった「高密度で結晶が大きい」特殊な炭素繊維に行き着いたのだ。
1985(昭和60)年に、現在とほぼ同じ仕組みのリチウムイオン電池の原型が完成したのだという。
また今回、吉野氏・グッドイナフ氏と共に、ノーベル化学賞を共同受賞する米国のウイッテンガム氏の業績だが、氏は、1970年代初頭、電極材料としてリチウムを使用した電池を世界で初めて開発した。
繰り返し使用を可能にした、ニッケル・カドミウム電池はあったものの、性能を飛躍的に高めたリチウムイオン電池が登場することで、世界は「モバイル(可動性)社会」へと変わっていったのだ。
蛇足ながら、東芝エグゼクティブフェローの水島公一氏をはじめ、多くの日本人が開発に貢献しているらしい。
今後も日本人の活躍が期待される分野での「ノーベル化学賞」受賞を、心の底から喜びたいと思う!
未来の地球環境を守る為にも、更なる日本人研究者の活躍を期待したい!