「氏神」様と「産土神」様の違いって何なの?
日本独特の思想の一つに、「神道」的考え方がある。
則ち「アニミズム」をベースとした考え方である。
自然界のあらゆる事物にアニマ=霊魂が宿ると信じる考え方。
所謂「万物有魂論」に立脚した考え方がその源流に流れておる。
よって日本では「八百万(やおよろず)の神々」と言われるほど多くの神々を崇拝する事となる。
先ずは「日本神道」を分類してみよう。
皇室を中心とする「皇室神道」・神社を中心とする「神社神道」・教祖並びに開祖の宗教的体験に起因する「教派神道」そして、民間で連綿と受け継がれてきた「民俗神道」・現在も批判に晒(さら)されておる国家の支援のもとに行われた、かつての「国家神道」…この五種に分けられるであろう。
五種の中の「神社神道」は、日本人にとって最も身近なものである。
これ自体が三種に分類される。
それは「氏神(うじがみ)神社」と「産土神(うぶすながみ)神社」それに「崇敬(すうけい)神社」の三種である。
「氏神神社」は同じ地域や集落に居住する人々が、地縁・血縁によって共同で神様をお祀りする信仰のこと。
日本では古来より、死者の霊魂は近隣にある代表的霊山へ向かって行き、そこで浄化プロセスを経た後に「天界」へ昇り、神様となる…とかたく信じられておった。
それが「祖霊(それい=先祖の霊)」で、血縁の氏族を中心とした共同体では、共通のご先祖様の霊を「氏神様」としてお祀りしておったのだ。
「氏神様」は特定の氏族並びに共同体の「守り神様」であったから、同じ「氏神様」を祀る人々を「氏子(うじこ)」と呼ぶ。
これに対して「産土信仰」というのは、共に暮らす土地の地縁で結ばれる信仰のことである。
巨石・大樹・山・川などの自然物を神格化し、聖なるものとして崇(あが)める事で、古くから信仰の対象となってきたのだ。
氏族が暮らす共同体が大きくなると共に、血縁関係のない者も暮らすようになってくる。
と同時に新たなる血縁関係が誕生する事で、徐々に「氏神様」と「産土神様」との区別がつかなくなってきた。
「氏神様」やら「鎮守(ちんじゅ)様」と呼ばれ区別がなくなっていったのだ。
その反面血縁・地縁に関係のない「崇敬神社」は、個々人の特別な信仰や感情・生き方を反映する神社のこと。
例えば神戸の湊川神社などその典型である。
建武三(1336)年五月二十五日、足利軍の赤松の軍勢三千余騎(ぐんぜいさんぜんよき)が、楠木正成(くすのきまさしげ)の軍勢に攻めかかる中、真正面から「魚鱗の陣」で突入した楠木勢。
好戦空しく一族十六人、郎従(ろうじゅう)五十余人が自害し果てた。
後に楠木正成をはじめとする一族、郎等の智・仁・勇を称えて「湊川神社」が創建されておる。
何れにせよ日本人には、我が國の精神的基盤を担う「神道」を、もっと身近に感じて欲しいと願う昨今である。