師走に寄せて思う事!
いよいよ今日から「師走」である。あっという間に一年が過ぎ去って行く気がする。
ただ一年の中でもこの「師走」は特別な月で、私はある意味「師走」が一番好きな月でもある。
「師走」は一年の総まとめの月であり、来年に向けて、徐々に気持ちを整理し、心構えを固めていく重要なる一ヶ月でもある。
世の中的には、忘年会やクリスマス、お正月に向けての商戦が繰り広げられ、そのことで、気忙しい部分もあるものの活気付く利点もある。
こんな時いつも思い出すお話の一つが、チャールズ・デイケンズの『クリスマス・キャロル』である。
クリスマス前夜。所謂(いわゆる)クリスマス・イブだが…。
ケチで気難しいスクルージと言う金貸し屋の前に、3人の幽霊が現れる。
幽霊達は、スクルージに、彼の「過去」・「現在」・「未来」を見せて、スクルージがどんな人間として生きると、他者と共に、豊かで楽しく生きられるか…?を提示してくれる物語となっている。
冷酷なスクルージが、3人の幽霊と出会う事で、他人を思いやる優しい人間になっていく物語。
しかし現実的には、冷酷な人間が幽霊と出会ったからと言って、すぐに優しく思いやりのある人に変わる事は難しい。
けれどそこに「クリスマス」という特別の設定がある事で、この物語を読む人たちに「美しい夢」を見せてくれる。
「美しい夢」とは、人間が他者を慮(おもんぱか)り、人間として豊かに生きる根幹を忘れずにいる事で、おぞましく、苦しみや悲しみに彩られた過去や現在をも、慈愛に満ちたものにし、単なる一個人の未来をも、永遠の祈りに塗り替えることができる…という「美しい夢」なのだ。
人間はより「美しい夢」を見るために、物語を必要としている。
年末の多忙な時期だからこそ、改めて『クリスマス・キャロル』を読んでみると、自分の根幹を問い直すことができるのではなかろうか?