ファントムペイン(Phantom Pain)って何なの?(1)
「ケプラーの法則」を発見した天文学者ケプラーは、ヒトがモノを考える仕組みについて、「小人説」を提唱した。
人間の脳の中には小人がいて、その小人がモノを考えている…としたのだ。
「小人説」を提唱した人は、他にもう一人いる。
カナダのペンフィールドという脳外科医。彼の「小人説」は、すこぶる有名な説として世界中に知れ渡っておる。
ペンフィールドはてんかん患者の手術中に、脳に直接電極を当てた時の様子を克明に記録し、大脳の「機能地図」を作ったのだ。
大脳のどこに体のどの部分の感覚が反映されているのか、又大脳のどこの部分が、体のどこを動かすのか…を、地図化した訳である。
これを、「ペンフィールドのホムンクルス(こびと)」と呼ぶ。
それにしてもペンフィールドのホムンクルスは、手と口が異常に大きい。
ヒトにとって、手を使うことと、言葉を使うことは、互いに連関し合っている。
四つ足から二足歩行になって、地面から手を離し、道具を作る事を覚えた人類。
発達した大脳は言葉を生み出し、知識を伝えたり蓄積する術(すべ)を生み出した。
文明は、ヒトの「手」と「口」から発せられる「言葉」によって生み出されたものなのだ。
前置きはこのぐらいにして、そろそろ「ファントムペイン」について話そうと思う。
「ファントムペインとは、「幻肢痛」のこと。
事故などで片腕を喪失した人でも、しばらくの間、脳の中の「ホムンクルスの腕」には変化がないといわれておる。
脳内にある体の各部位に対応する前述のマップが、その部位を喪失したにもかかわらず、更新されないことが影響しているというのだ。
これによって、無いはずの腕が痛くなる「ファントムペイン現象」を引き起こしている…という。
然し乍ら現状では詳しい原因は判っていない。
何れにせよ、その痛みは相当なもので、電流を流した万力で潰されるような痛みがあるということだ。
上述の通り、人間の脳は「無い現象」さえ、恰もあるように取り繕い、無いはずの痛みまでつくり出してしまう。
何とも不思議に満ち満ちた「人類の脳」。
この奥深さに改めて驚かされるばかりだ。
個々人が自分の「脳の力」をアップさせることと、真剣に向き合い、脳力アップに取り組むことで、人類の可能性を広げることができると痛感する昨今じゃ。