『南洲翁遺訓(西郷隆盛さんの言葉)』について教えて!(1)
「正しく生きる」とは、命を賭し覚悟して生きる事!
東京上野にある、犬を連れた西郷どんの像は、日本一有名な像かもしれぬ。
この西郷隆盛には、所謂著書と呼ばれるものはない。
西郷さんの手紙や漢詩、建白書(けんぱくしょ=政府に自分の意見を申し立てることを書いた書面)がまとめられている『西郷隆盛全集』はあるものの、直接的に自分の考えを皆に知らせしめるため…の書籍は存在しない。
けれど、西郷さんと直接交わった人々の記憶や記録を集めてそれを編纂したものとして『南洲翁遺訓』が出来上がっている。
その中にあるいくつかの言葉を紐解いて行こう。
ある時、西郷先生が、こうおっしゃった。
「正しく生きるという覚悟を、ふだんから固めて生きていない人は、何か突発事態が起こると、うろたえ騒いで、事態に正しく対処できないものだよ。」
そして火事を例に挙げ、火事が起こったら、こう対処するのだ…と考え、常日頃から心の準備をしている人は、少しも狼狽(うろた)える事なく、火事に対処できるのだと…。
それと同じように、日頃から「正しく生きる」覚悟を固めておく事で、突発的事態に遭遇しても、しっかり対応出来るのだ…としている。
西郷さんは兵士たちに向かって、戊辰戦争に出陣した時のことを持ち出して、こう続けている。
「我が軍の戦闘態勢が万全なものかどうかを、こちらからの視点からだけで見るのではなく、あちらからの視点からも見よ!そして心のなかで、敵軍の一員になったつもりで、わが軍を攻撃してみよ!それが、わが軍の戦闘態勢を万全のものにするためのもっともよい方法だからである。」
と…訓示した…とある。
「正しく生きる」覚悟とは、「死を怖れずに生きる」こと。
何が起こっても常住座臥(じょうじゅうざが=座るにも寝るにも・いつでも)、冷静且つ臨機応変に生き抜く為に、死をも厭わぬ生き方をしようではないか?