上皇后陛下の御講演をまとめた御本『橋をかける』が意味する事とは何か?(1)
自己の内面をみつめる
上皇后陛下の御本『橋をかける』は、平成10(1998)年9月20日から24日までインドのニューデリー、アショカ・ホテルで開かれた国際児童図書評議会(IBBY)第26回世界大会において、ビデオテープによって上映された上皇后様の基調講演が、御本となったものだ。
御本の中にこんな文章がある。
生まれて以来、人は自分と周囲との間に、一つ一つ橋をかけ、人とも、物ともつながりを深め、それを自分の世界として生きています。この橋がかからなかったり、かけても橋としての機能を果たさなかったり、時として橋をかける意志を失った時、人は孤立し、平和を失います。この橋は外に向かうだけでなく、内にも向かい、自分と自分自身との間にも絶えずかけ続けられ、本当の自分を発見し、自己の確立をうながしていくように思います。
(『橋をかける』子供時代の読書の思い出 上皇后陛下 文春文庫 12ページ12行〜13ページ4行目迄)
上皇后陛下は、人と自分と周囲との間に橋をかけることは、自分が自分自身との間に橋をかけ続ける事と同じだと仰っている。
ならば自分が自分自身との間に橋をかけると言うことは一体どう言う事なのか?
それは自分で自分を磨き続け、自分自身に正直に生き、自分がこの世で生かして頂く事ことに対し、謙虚に・誠実に・清廉潔白な日々を送る事。
その上で常に自己改造し、挑戦し続ける事!こう言う生き方そのものが、自己の内面を豊かに膨らませ、その事が他者との関係性を改善することに繋がる…と言われておるように思う。
本当の自分を発見することは、全き人間として確立する事と表裏一体の関係にある。
そして、人間一人一人が全き人間としての確立を志向する人生を歩むこと。
これこそ本来的「平和」への道標(みちしるべ)になる事を語っておられるのだ。
上皇后陛下は常に、今、世界で起こっている事を、自己の内面に照応させ、その問題の根幹を突き止めようとなさる。
この自らに対する厳しさ、他者に対する共感の深さに脱帽する。
我々も他者を批判することに終始せず、みずからの内奥をじっくり見つめ、自己の内面を充実させることで、数々の問題と向き合ってゆきたいものじゃ。